人生の中で、何かをやりたいと思いながらも、そのタスクに取り組めずにいる経験はありませんか?例えば、勉強するつもりでいても、なかなか机に向かえない。ダイエットを決意しても、つい過食をしてしまう。そんな矛盾した気持ちに悩まされたことは誰しもあるはずです。

この矛盾した気持ちの背景には、心理学的な要因が潜んでいます。やりたいという前向きな気持ちと、やりたくないという消極的な気持ちが、常に対立しているのです。これは決して珍しいことではありません。むしろ、人間の普遍的な特性なのかもしれません。

今回は、この「やりたい気持ちとやりたくない気持ちの間で揺れ動く」心理状態について、その原因となる心理的阻害要因を解説します。自分自身の内面を理解することで、この矛盾した気持ちをうまくコントロールする手がかりが得られるでしょう。

誰もが経験する”やりたいけどやりたくない”という気持ちの背景にある、心理メカニズムを一緒に探っていきましょう。

矛盾した気持ちに悩む経験

私たち人間は、しばしば”やりたい”と”やりたくない”という相反する気持ちに翻弄されます。頭ではやるべきことがわかっていても、つい後回しにしてしまったり、逃げ出したくなったりする経験は誰にでもあるはずです。

例えば、健康的な生活を心がけようと思いつつ、ついつい過食をしてしまう。または、給料日前の残り少ないお金を大切に使おうと決めていても、つい衝動買いをしてしまう。そんな経験から、自分でも首を傾げてしまうことでしょう。「なんでこんなにも自分に嘘をつくんだろう?」と。

この矛盾した気持ちに悩まされるのは、単に意志が弱いからだけではありません。潜在的な心理的要因が影響しているのです。自分の中で”やりたい気持ち”と”やりたくない気持ち”が拮抗していて、その結果、行動に移せずにいるということなのです。

人は、時として自分の気持ちや行動と真逆のことをしてしまいます。これは決して珍しいことではありません。むしろ、人間らしい普遍的な特性なのかもしれません。このように”自分でさえもわからない”と感じるのは自然なことなのです。

そこで大切なのは、この矛盾した気持ちに向き合い、その背景にある心理メカニズムを理解することです。次のセクションからは、具体的にどのような要因が作用しているのかを解説していきます。

やりたい気持ちとやりたくない気持ちの起源

私たちの中で”やりたい気持ち”と”やりたくない気持ち”が生じる主な要因は3つあります。

1. 欲求と不安のせめぎ合い

人間には様々な欲求があり、それを満たそうとする一方で、不安からその欲求を抑えつつあります。例えば、やせたいという欲求と、運動は面倒だという不安です。この欲求と不安が拮抗することで、行動に移せずにいる状態に陥ります。

2. 完璧主義と過剰な心配

ときに私たちは、過度に完璧を求めすぎたり、過剰に心配したりします。そうすると、実際にその行動に取り組むよりも先に、恐れや不安を抱いてしまうのです。「失敗するかもしれない」「上手くできないかもしれない」と考え、結果的に行動が阻害されてしまいます。

3. 過去の失敗経験の影響

以前失敗した経験が心的外傷となり、無意識のうちにその行動から逃げ出そうとする気持ちを抱いてしまう場合があります。失敗を恐れる気持ちが強すぎると、新しいチャレンジに取り組む前から消極的になってしまうのです。

つまり、私たちの中で”やりたい”と”やりたくない”の気持ちが生じるのは、欲求と不安の板ばさみになっていたり、過剰な心配や過去の失敗経験が影を落としているためなのです。この心理的メカニズムを理解することが、矛盾した気持ちを上手く扱う第一歩となります。

心理的阻害要因とは

私たちが”やりたい気持ち”と”やりたくない気持ち”で揺れ動く背景には、いくつかの心理的メカニズムが関係しています。これらを心理的阻害要因と呼びます。主な阻害要因は以下の3つです。

1. 自己防衛メカニズム

私たちは無意識のうちに、自分を守ろうとする心理的メカニズムを働かせています。そのため、危険や失敗を恐れ、チャレンジから逃げ出そうとするのです。つまり、行動を起こさないことで、安全な場所に留まろうとするわけです。

2. 認知的ゆがみ

人は状況を過度にネガティブに解釈したり、物事を極端に考えすぎたりする傾向があります。例えば「失敗するかもしれない」と過剰に心配したり、「完璧でなければ意味がない」と極端に考えたりします。このゆがんだ認知が行動の足かせになっているのです。

3. 焦点効果

人は注目するポイントによって判断が大きく変わってしまいます。例えば、食事制限に失敗したことに注目すると、「ダイエットは無理だ」と思い詰めてしまう。一方で、成功した経験に注目すれば、「頑張ればできる」と前向きになれます。つまり、焦点を当てる視点によって行動が左右されるのです。

このように、私たち自身の心理状態が、行動を阻害する要因となっています。この心理的メカニズムを理解することが、やりたいことに前向きに取り組む第一歩となるでしょう。

どうすれば克服できるか

“やりたい”と”やりたくない”の気持ちで揺れ動くことは、誰にでもある体験です。この矛盾した気持ちは、私たちの心理的阻害要因によって引き起こされています。しかし、適切な方法を身につければ、この心理的なジレンマを乗り越えることができるのです。

1. 自己受容と自己肯定感を高める

まず大切なのは、自分自身を受け入れ、認めることです。完璧を求めすぎず、失敗を恐れすぎないことが大切です。自分の長所や可能性を信じ、自己肯定感を高めましょう。そうすれば心理的プレッシャーから解放されます。

2. 合理的な思考プロセスを身につける

次に、物事を理性的に冷静に見つめ直す訓練が必要です。認知的ゆがみに気づき、合理的な思考回路を身につけましょう。「完璧でなくてもいい」「細かいことを気にしすぎない」と自分に言い聞かせる習慣をつけるとよいでしょう。

3. 小さな一歩から始める

最後に、目標に向かってストレスをかけすぎないことが重要です。とにかく小さな行動から始めましょう。それが自信につながり、やがてはもっと大きな一歩を踏み出せるようになるはずです。

このようなアプローチを意識的に実践することで、徐々にではありますが、心理的阻害を克服していくことができるでしょう。自分自身を大切にし、寄り添いながら、前に進んでいきましょう。

まとめ

「やりたい気持ち」と「やりたくない気持ち」の板挟みになり、行動できずにいる経験は誰もが持っているはずです。この矛盾した気持ちの背景には、潜在的な心理的要因が関係しています。

欲求と不安のせめぎ合い、完璧主義や過剰な心配、過去の失敗経験などから、自己防衛メカニズムが働き、行動が阻害されてしまうのです。また認知的なゆがみや、物事の捉え方による焦点効果も大きな影響を及ぼします。

しかし、この心理的なジレンマは決して乗り越えられないわけではありません。自己受容と自己肯定感を高め、合理的な思考プロセスを身につけることが大切です。そして、とにかく小さな行動から着実に一歩を踏み出していけば、徐々に心理的阻害を克服できるはずです。

私たち一人ひとりが「自分らしく生きる」ためには、こうした揺れ動く気持ちを受け入れ、寄り添うことが不可欠なのです。自分自身を大切にしながら、前に進んでいきましょう。「やりたいけどやりたくない」そんな気持ちを認めた上で、あなた自身の道を歩み続けてください。